日々揚げ足をとって生きていく

不定期に揚げ足をとっていきます

関係代名詞が理解できていないGIGAZINE

 海外の英語記事を雰囲気だけで訳して雑に要約することでおなじみのGIGAZINEさんから。

高タンパク製品には「求めるような効果はない」と専門家が語る

 よくあるフードファディズムに警鐘を鳴らす記事で、内容自体がどうというわけではない。が、なんとなくひっかかった一文があった。

レディング大学で栄養学の講師を務めるダニー・コマン氏は、タンパク質を摂取することは筋肉量を増やす手助けになるとしていますが、そういった事実が人々により多くの不要なタンパク質を食べさせているとしています。

 ぱっと見、変な文ではない。しかし、よく考えてみると、人々がタンパク質を過剰摂取している原因を「タンパク質の摂取が筋肉量を増やす」というエビデンスの存在に求めるのは意味がわからない。エビデンスが誇張されているとか、捏造だとかいうならその点を問題視するべきだろう。しかしエビデンスがあることそれ自体のせいで人々がタンパク質を過剰摂取してしまう、というのは言いがかりにもほどがある。記事中で触れられている通り、「過剰」摂取が起こるのは、人々が日常的に摂取しているタンパク質の量が既に過剰だからだ*1。この文にはなにか肝心なところが欠けているような気がする。

Danny Commane, a lecturer in nutritional science at the University of Reading, said while there was some evidence suggesting that eating more protein could help increase muscle mass, the fact that people were already eating so much more than they needed made supplements unnecessary.

というわけで原文を見てみると、関係代名詞のthatを読めていないせいで誤訳しているようだ。おかげで、「事実」が指す意味内容をまるきりとりちがえている。GIGAZINEでは「事実」の指す内容は前述の通り「タンパク質を摂取することは筋肉量を増やす手助けになる」になっているけれど、原文ではthe factは続くthat以下の関係代名詞節を受けており、「人々はすでに必要以上に食べすぎていた(people were already eating so much more than they needed)」という内容を指している。the fact that~neededまでの節全体を主語ととって、「人々がすでに必要以上に食べすぎているという事実が、サプリメントを不必要なものにした」と訳すのが正しい。時制は間接話法に従っているので訳すときは現在形にしても別にいいけど。ついでに言うとwhile以下コンマまでの節は「~であるとしても」と譲歩の意味でとるべきだろう。

 というわけできょうは重箱の隅みたいな揚げ足取りでした。


*1:2つ上の段落にあるとおり。“イングランド公衆衛生サービスのガイドラインによれば、1日に摂取すべきカロリーの約11%がタンパク質であるのが理想とされているのですが、National Diet and Nutritionの調査によると実際の成人のタンパク質摂取量は摂取カロリーの17%~18%程度と「摂取しすぎ」の状態となっています。”